隧道の詩

定形も自由もいろいろ

不安定な気持ちを言葉にしたい。それだけの気まぐれなブログ。口語自由詩ばかり。
くだらない近況報告も挟みつつ。
過去に書いたものも少々。
2016.7.5開設

月光

大切だったような 楽しかったような 思い出の中の人達に 静かに忘れられていく 月が綺麗じゃなければこんな夜 きっと呼吸をするのも苦しい

ブックカバーの詩

私は、私の大好きな言葉を紡ぐあの人の 本当の名前も性別も知らないのです。 ハンドバッグに入る小さな本に 無機質に印刷された文字だけが、 全てでした。 誰もが、どこか遠くにいる人の歌う歌を聴いて、 描いた絵を見て、 撮られた写真を信じて、 その人を知ったような気でいます。 私も。 夜ですね。 あの人はまた、素敵な言葉を 星と一緒に紡いでいるのでしょう。 私は平凡。 だからこんな夜にも、擦り切れた表…

毒殺

君が昼食後にかじった飴。 死んだ果実と同じにおいが 僕の胃をひっくり返そうとしていたね。 とても嫌だし気持ち悪いから 僕は校庭へ行って逆上がりをした。 君が食べたのは僕の幸福だよって言って、 ごめんって謝る馬鹿な君が 静かに死んでいくのを見ていたい。 平然と。 ただ、平然と笑って。

星砂

死んでいいよ。 きれいなまま、死んでいいよ。 人は死ぬと星になるから、君が死んだら夜空はきっと、今までで一番きれいに見えるだろうってこと。有名なあの砂浜が、全部サンゴの死骸でできていること。子供の頃手紙を入れて海に流したビンが、今はただのゴミになってどこかの砂浜にうちあげられていること。君が死んだ猫の骨を探して毎日海辺を歩いているから、君を好きになれないこと。 全部知らないままただの白い灰になっ…

大学生

君が寂しいと言うから、会いたいと言うから、 一週間分の食費を使って会いに行ったんだよ。 一人暮らしを始めてようやくモノの値段を知った君。 牛肉が大好きだったくせに、 100グラム50円の鶏肉に飛びつくようになって 君は以前よりずっと人間らしいじゃないか。 でも、 僕が僕の有限の時間を君のために使った理由、 君はいつになってもわからないよね。

愛の死

致死量の睡眠薬とコップ一杯の水が 私の枕元で愛をささやいた。 私は青白い月光の下でかすかな幻想を抱いていた。 目覚めない私の前。 誰かが私の名を呼んでいるだろうか。 誰かが私のために涙を流しているだろうか。 誰かが私の冷たい頬を優しくなでているだろうか。 願わくば、その「誰か」が君であるようにと想い続ける夜。 随分と長かった。 おはよう 今日は君のお葬式だね さようなら 私は君の名を呼んだり頬を…