背景
世界中にあふれている悪意が、私を通り越して、どこか遠い海で
魚のえさになっていればいいのに。
過去の戦争だって、殺人だって、知らなくても生きていけるのだから、
どんな悪意だって私たちには関係ない。
劇の舞台の背景パネルみたいに、あってもなくてもいいようなものであればいい。
夕日が沈んでいく街で、明日が来なければいいと思う事だけが、
唯一の悪意であるような世界で生きてみたかった。
それでも記録される事柄が悪意であふれているから
背景は私達だったのかもしれないと思いながら、
たった一つの悪意と共に眠りにつくんだ。